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ヒトを図るヒト


※高校時代


「シズちゃんってば、機嫌悪い?」
登校してクラスに一歩足を踏み入れた瞬間、静雄に声がかけられた。
声のした方に目をやると、窓際の一番後ろという良席に座り頬杖をついて笑みを浮かべる臨也と目があった。
心象が悪い臨也に朝から出会ったことで、途端に静雄の機嫌が下がった。
「悪く見えるってなら、それは今のお前のせいだ」
「何でもかんでも人のせいにするのはいけないよ、シズちゃん」
教室に入り自分の席へと向かうと静雄は持っていた学生鞄を机の上に置いた。
その学生鞄を握る手には力がこめられていてワナワナと震えており、一度こぶしを開いて鞄から手を離すも再びこぶしを握り直して静雄は口を開いた。
「ウザいんだよ、臨也消えろ」
それを聞いた臨也は頬杖をついたまま目を細めてニッコリと微笑みながら言った。
「そう言うけどさ、オレよりバカな人に指図ってされたくないんだよね」
「バカぁ?」
「うん、シズちゃんバカじゃん、ついでに言うならバカでアホで単細胞で………」
ガンッ。
そのとき鈍い音が教室に響いた。
教室中の視線が静雄と臨也に刺さる中、静雄は自分の机に力の入った自身のこぶしを叩きつけていた。
力のこめられたそれはいとも簡単に机の板を陥没させ、机の脚をもひしゃげさせた。
その後、壊れた机の中に入っていたと思われるノートが数冊床へと滑り落ちた。
「いーざーやーくーん」
その壊れた机を思いっきり振りかぶって投げようとするも、臨也の言葉によってその行動は止められた。
「ほら、そうやってすぐ暴力に頼ろうとする…バカ以外の何ものでもないだろ?」
眉間の皺を増やしながらも静雄はふりかぶっていた壊れた机をその場におろした。
そして胸を張って両手でこぶしを握りながら叫んだ。
「いいぜお前より頭いいこと証明してやる…今度の中間試験で勝負だ!」
「へぇ…まぁいいけど」
「自分がバカでしたって謝らせてやる!」
静雄のその言葉に少し考える素振りを見せながら臨也は言った。
「じゃあ勝ったらご褒美もらえるってことにしようか」
「勝手にしろ、俺が勝つから関係ねぇ!」
教室中が証人となる中、静雄と臨也の賭けが成立した。
近日中に迫った中間試験の点数で勝負をするらしい。
いつもは静雄も臨也も授業や試験に対してやる気がなく、試験日に学校に来なかったり、来ても睡眠をとっているのが常だ。
故に二人の実力は未知数である。
当事者同士の勝負の裏で、どちらが勝つかコッソリ賭けが行われていたのは高校生の興味の行く先と言ってよい。
二人のやり取りを見ながら、昔馴染みである新羅は溜息をついて呟いた。
「っていうか、どっちもバカなんじゃ…」
小さく紡がれたその言葉は教室の日常の騒音に溶け込んで消えていった。

 

二週間後。
「折原臨也は職員室に来るように、以上」
担任の教師はそう言い残すと終礼の挨拶をして教室を出ていった。
「臨也君、呼ばれてるよ?」
新羅に言われるも、臨也は顔の前で手をヒラヒラと振るとそれに答えた。
「あー、いいや。それより大事なことがあるしね、シズちゃん」
「シズちゃんって呼ぶなって言ってるだろ…でももうすぐお前が地面にひれ伏して詫びを言うのが楽しみだから今は許してやる」
静雄と臨也は鞄を持つと連れ立って教室を出た。
それに続いて何人かが二人のあとを追う。
二人がたどり着いたのは靴箱の並ぶ玄関のホールだった。
「ちょうど貼ってるところだね」
「早くしろ早く…」
「シズちゃん短気なんだから」
教師が横に長い紙を持って脚立に乗り、天井に近い壁へとそれを貼り付けていた。
一番右端には縦書きで『中間試験成績優秀者』と書かれている。
今日は先日行われた中間試験の成績の発表日だった。
「っしゃぁ!」
そこから左へと視線を動かした静雄は叫んだ。
『中間試験成績優秀者』のすぐ左、第一位と書かれたその下にあった名前は『平和島静雄』というものだった。
「寝ないで教科書丸暗記した甲斐があったぜ…!」
「記憶を整理するために寝た方が効率いいって知ってた?」
「は?勝ちは勝ちだろ!」
勝ち誇って臨也を見下ろしながら静雄は不敵に微笑んだ。
しかし臨也は動じることなくその笑みに対して笑い返した。
「そうだね、じゃあご褒美…」
「まず俺に詫び……っ!?」
静雄は思わず息を飲んだ。
臨也の顔が近付いたかと思ったあとに唇に残る感触とリップ音。
「はい、ご褒美」
「!?」
「ご褒美の内容は決めてなかったし今のでチャラね、じゃあ!」
突然の臨也の行動に停止していた静雄だったが、気がつくと遠くに走る臨也の姿を目にしてそれを追いかけ始めた。
「いーざーやー!!」
玄関ホールには、賭けをして二人の対決の結果を楽しみにしていたものの、驚きのキスシーンを目撃してしまい固まったまま動けない生徒達が残されていた。


「待て、臨也!」
「待てって言われて待つ人がいたら会ってみたいよ」
「チッ!」
「本当シズちゃんってからかうと楽しいんだから」
二人は校舎中を走り回っていた。
距離は縮まったものの、追いかける静雄はなかなか臨也を捕らえられないことに苛立っていた。
また、臨也はそんな静雄を見て更にからかいながら火に油を注いでいた。
「シズちゃん…そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「うるせぇ」
「もしかして初めてだったとか?奪っちゃった!」
「なわけねーだろ!」
臨也は即答されたその言葉に何故か一抹の寂しさを覚えた。
だがすぐにそれは心の中で苛立ちへと変化した。
「どうしよう胸がモヤモヤする…」
「は?」
様子がおかしいながらも、逃げる速度が緩まった今が臨也を捕まえるチャンスだと静雄は意気込んだ。
だが臨也はヒラリと体を翻すと足を出し、あと一歩で捕まえられると踏み込んだ静雄の足にそれを引っかけた。
「…っ!」
思いがけない臨也の動きに対処できず、静雄は床に手をついて無様に転ぶことは避けたものの躓いてしまった。
「気分悪いから帰る」
素早く起きあがった静雄が止める間もなく、臨也は2階の窓からグラウンドへと飛び降りた。
胸にチクリとした痛みをともないながら。
少年はまだその気持ちをなんと呼ぶかを知らない。

 

「…来ませんね」
職員室で教師は手に何枚もプリントを持ちながら溜息をついた。
「無記名だけど満点…折原君はやる気があるのかないのか…」
満点とは言いつつも、無記名解答は0点と同じ扱いをされる。
中間試験で満点を取りながらも、全ての試験を無記名で受けた臨也の試験に対する態度に説教を試みようとしていた担任の教師だったが、本人である臨也は既に学校にいない。
「高校生に完全になめられている…問題児が多くて心配だ…はぁ…」
教師の嘆きなど生徒に伝わるはずもなく、毎日問題児達は教師を悩ませる問題を山積みにしていくのだった。


 


≪臨也君の憂鬱≫
シズちゃんをからかいたい→チューしたい→罰ゲームでもシズちゃんからは絶対やってくれない→じゃあご褒美形式で問答無用でオレが→てっきりファーストキスだと思ってたのに→ムカつく→バカのくせにマセてたシズちゃんがムカつくのかそれとも…?

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