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一言では語れない


池袋に来るなと言ったにも関わらず、たまに姿を現す臨也。
俺にだって人をいたわる心くらいはある。
…だがそれを臨也相手に持てるかと言ったら、それはない。
ある意味、奴はトクベツなのだ。


「げ、シズちゃん…」
その声に煙草を吸いながら顔をあげると、路地の真ん中に臨也が立っていた。
ここは池袋。
何度来るなと言っても姿を見せる臨也に静雄の怒りは簡単に爆発した。
「いーざーやー!」
池袋で顔を合わせたら最後。
二人の死ぬ気の追いかけっこが始まる。

今日、軍配が上がったのは静雄だった。
走る臨也に向けて勢いよくそこにあった飲食店ののぼりを投げつけた。
それを簡単に避けた臨也だったが、のぼりを投げたと同時に走り出して距離を詰めていた静雄にすぐに対処することができなかった。
「…チッ」
「つかまえたぞ」
二の腕を静雄の握力でガッチリとつかまれてしまい、臨也はそれを振りほどいて逃げることはできなかった。
ならばと空いた方の手で隠していたナイフを取り出そうと手を伸ばすが、指先が冷たい金属に触れる前にその手首もガッチリと押さえられた。
「無駄な抵抗するな」
「うるさいなーオッサンは」
「はぁ?お前とタメだし…物忘れ激しい臨也のが歳なんじゃねーの?」
顔全体に苛立ちを覗かせながらも、静雄は臨也の両手首を拘束しその身を引っ張るようにして歩きだした。
「宿泊でいいだろ」
「オレこのあと仕事あるんですけど…っ」
「知るか」
二人がたどり着いたのはすぐ近くにあったラブホテル。
臨也は慣れた手つきで部屋を選択し部屋代を払った静雄のあとを追い、二人でエレベーターへと乗り込んだ。
目的の階にたどり着き、部屋のドアにカードキーを差し込んで中へと入る。
静雄は無抵抗の臨也をベッドの上に投げると、そのままその上に覆いかぶさった。

二人は嫌いあっていた。
しかし体を重ね合う関係でもあった。
静雄が臨也のことをつかまえたときはラブホテルへと足を運ぶ。
ベッドの上では自分の常人より強すぎる力で壊れないよう静雄は優しく臨也のことを扱う。
また、臨也は自分に与えられる快楽に、平和島静雄という一人の男に酔いしれていた。
しかし二人は嫌いあっているのだ。
嫌いあっているというよりは、お互いの気持ちを確かめあうような無粋なことはしなかった。
というのも今の関係すら壊れてしまうことを恐れていたからだ。


行為が終わり、静雄は腕の中に臨也を抱き締めて眠りについていた。
自分を包み込む体温に安心し臨也も眠りについていたが、夜が明ける前に目を覚ますとその腕の中から抜け出して床に散らばった服を集め身につけ始めた。
臨也が上着を羽織ったところで後ろから声がかけられた。
「あのさ…何でいつも何も言わずに先に帰るわけ?」
振り向くと、ベッドの上で上体を起こしこちらを見つめる静雄と目があった。
起こしてしまったのだったら謝ろうとも思ったが、静雄相手に謝罪するのも気に食わなかったので無言でその瞳を見つめ返した。
何度も体をこのような場所で重ねていたが、そのたびに臨也は朝を迎える前に部屋を出て行っていた。
一度まばたきをすると、臨也はその問いに正直に答える。
「何でって…帰るなとも言われてないだろう?変なことを聞くんだねシズちゃん」
その言葉に静雄は考える素振りを見せた。
「そうか…」
そして小さな声でつぶやくと、手を伸ばして臨也の腕をつかんだ。
「え!?」
静雄が勢いよくつかんだ腕を引っ張ると、臨也はベッドへと倒れこんだ。
その臨也を先ほどまでと同じように腕の中に抱き締めると静雄は満足そうに瞳を閉じた。
「シズちゃん?寝ぼけてるの?」
「なわけあるか」
「じゃあ何?」
臨也の問いにどう答えようか悩んだ静雄だったが、伝えたいことだけを一言ささやいた。
「…帰るなよ」
「!」
「朝までくらいココにいろ」
至近距離でささやかれた臨也の頬に少しだけ赤みがさした。
その熱を帯びた心を見透かされないように臨也は悪態をついた。
「池袋に来るなとか言っておいて…シズちゃんって矛盾してるよ」
「そうか…」
「だいたい仲悪いオレ達がこんな関係なんてバレたら驚かれるだろうな」
「そうかもな…でも俺の前に姿を現さないでほしいというのは本当だからな」
その意味を図り損ねる言葉に、二人の関係は不思議なものとして落ち着いたままだった。
お互いに一歩踏み出せば何かが変わるかもしれないこの状況、しかしプラスよりもマイナスを考えてしまい、お互いに踏み出さないままの二人の関係。

 

俺の前に姿を見せないでほしい…気持ちが抑えられないから。

実はそれが隠された静雄の本心、しかしそれを口に出すことはない。
静雄は臨也に腕枕をしながら片手で煙草を取り出して口にくわえた。
そしてその先にライターで火をつけて吸い込むと、白い煙を吐き出した。
その煙はまるで形の無い自分達の関係を表しているようで、静雄は複雑な思いを憂う溜息と一緒に再び白い煙を吐き出した。

 


 

 

こんなシズイザもありかな、という。
しかし私は『静雄→←←←←←臨也』くらいのラブ度が好物です…!(こっそり主張)

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